About

石岡瑛子(1938―2012)――グラフィックデザイナー、アートディレクターとして、資生堂、パルコをはじめとする数々の広告の仕事で時代を湧かせ、1980年代に拠点をニューヨークへ移して以降は世界を魅了し続けてきたアーティスト。その創造の軌跡はいまなお色あせることがない。

 

表現のクオリティに100%以上の完璧を求め、「私」に徹頭徹尾こだわり続けた石岡瑛子。それと同時に彼女は一流のクリエイターたちとの血の通った濃密なコラボレーションを愛し、創作のプロセスを重視していた。

 

そのものが“作品”とさえ言えそうな石岡の生き方は、仕事において大切なことは何か? アートはビジネスや社会といかに関わるべきか? といった本質的な問いを我々に投げかけているように思える。

 

この企画は石岡瑛子の仕事と生涯を追う評伝の試みである。石岡と仕事を共にした日本と海外のクリエイターたちへのインタビュー取材を中心に、雑誌や書籍等のメディアに残された彼女自身の声や関係者の証言もピックアップしていきたい。

 

石岡瑛子という人を中心に彼女が生きた時代を記録し、現代からの目線も交えて考察しながら、新しい時代につなぐプロジェクトでもある。

 

取材を重ねつつ、それと同時進行で執筆した記事を当サイトに連載していく。そこに加筆、再編集したものを書籍として上梓する予定である。さまざまな人の話をうかがい、書きながら考え資料にも当たり、また誰かに会いに行く、トライアスロンのような長距離の仕事になりそうだ。

 

私は生前の石岡への二度のロングインタビューで、彼女から大きな刺激と勇気をもらった。生命力のかたまりのような彼女の言葉と人柄には、人を前に向かせる力があった。

 

これまで石岡瑛子の名を聞いたことがなかった方々に、そして自分の奥底にある何かを形にしたいという情熱を持ち続けている人々に、彼女の信念と勇気、仕事に捧げたエネルギーの片鱗だけでもシェアできれば、これに勝る幸いはないと思う。

 

「石岡瑛子とその時代」に関わる山のような資料と記憶に埋もれながら。

 

2015年2月

河尻亨一(編集者/ライター)

 


 

Profile

 

石岡瑛子(いしおか・えいこ)

 

東京生まれ。

東京芸術大学美術学部卒。

グラフィックデザイナー、アートディレクターとして、

資生堂、パルコ、角川書店などの広告キャンペーンを成功に導き、

1970年代にセンセーションを巻き起こす。

 

1980年代に入ってニューヨークに活動の拠点を写し、

映画、演劇、オペラから展覧会、ミュージックビデオ、

サーカス、オリンピックまで、幅広いプロジェクトを手がける。

 

アカデミー賞、グラミー賞、ニューヨーク批評家協会賞、

カンヌ国際映画祭芸術貢献賞などを受賞。

1992年、ニューヨーク・アートディレクターズクラブ

名誉殊勲賞により殿堂入り。

2002年、紫綬褒章受章。

 

著書に『私デザイン』、作品集に『EIKO BY EIKO』(日本語版『石岡瑛子風姿花伝』)、『EIKO ON STAGE』などがある。

 

2012年1月21日永眠。